衰退しかけた動物病院業界の立て直しを図り、全国の病院をグループ化。 名刺共有は社内の「つながり」を把握する最適な手段
JVCC株式会社
動物病院業界の労働環境改善とさらなる発展のため、M&Aによる動物病院グループを形成。現在、全国各地の動物病院が参画中。それぞれの動物病院と資本関係を持ったグループ化を推進し、獣医師のキャリアを通じて多様な働き方を提供する「日本最大の動物病院グループ」を目指している。
- 目的
- グループ化によって広がった人脈を一元管理したい
- 課題
- グループ化した動物病院がもともと持っていたネットワークを把握しきれない
- 効果
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取引したい企業や、病院の院長先生へのアプローチがしやすくなった
会う人を検索機能で事前に調べておくことで、コミュニケーションが円滑になった
衰退の危機に晒された動物病院業界を底上げする
<お話を伺った人>
JVCC株式会社 代表取締役CEO 藤野洋様
実はいま動物病院業界は、人員不足や労働環境の劣悪さなど、多くの問題を抱えており、衰退の危機に晒されているといっても過言ではない状態です。おそらく日本で働く獣医師の中には、業界のこうした変化に気づいている人も多いと思います。
しかし動物病院は、それぞれが独自の経営方針を持っている、いわば個人商店のようなものなんです。だからみんなで協力して課題を解決するのが難しい。個人間での事業継承や若手獣医師の開業も行われているものの、業界全体の課題解決には至っておらず、経営がうまくいく病院とそうではない病院の差が開き続けています。
そこで当社では、M&Aによる動物病院のグループ化をはじめました。全国各地にある様々な動物病院と資本関係を持ち、グループを形成することで、動物病院業界全体を良くしていこうと考えています。
ではなぜ、グループ化が業界の改善につながるのか。そこには動物病院の経営の仕組みが大きく関わっています。動物病院では、経理や財務、医療事務や受付などの役割分担がなく、院長先生が診療もバックオフィスの仕事も全て請け負います。日中は診療をして、診療後はバックオフィスの業務に取り掛かる。しかし、夜間の呼び出しもありますし、一晩中、入院している動物の世話をすることもあります。つまり働き続けているわけです。あまり知られていないことですが、動物病院の先生は、頑張りすぎて体調を崩してしまう人がたくさんいるんですよ。
一緒に働いているスタッフも辛いでしょう。動物の命がかかっている仕事ですから、日頃から厳しい指導を受けます。それに加え体力的にも過酷な状態が続くため、若手の獣医師も、なかなか育ちません。こうした労働環境の改善や若手獣医師の教育などを実現させるために、大きな組織による、業界のダイナミックな改革が必要なんです。
そこで当社では、グループに参画した病院のバックオフィスの業務を担っているのです。そうすることで、個々の病院は医療に集中できます。院長先生も診療に専念でき、労働時間も減る。一緒に働くスタッフの負担も少なくなるはずです。私たちは、グループ化を通して、動物病院業界をもっと働きやすく、元気な業界にしたいと思っています。目指すところは、日本最大の動物病院グループですね。
グループ化で広がった「つながり」を効率的に活用
おかげさまで現在は全国各地の動物病院がグループに参画しています。それに伴い業界内でのネットワークも広がりました。そこで新たな課題として生まれたのが、それぞれの病院がもともと持っているネットワークを把握し切れないということでした。同じ名刺が重複していたり、逆に今まで取引のない病院や企業の名刺があったりして、管理をする手間がかかるようになって。
こうした課題を解決するために、名刺の一元管理を検討するようになったんです。グループ内の名刺をJVCCで整理し、すべて見ることができれば、これまで取引がなかった会社や病院へのアプローチがもっと簡単になるかもしれません。重複している名刺も整理できます。だから「Eight 企業向けプレミアム」の導入を決めました。
実際、グループ全体のネットワークが明確になったおかげで、今まで取引のなかったさまざまな病院の院長先生や業者さんとも、つながりやすくなったと思います。検索機能も良く使うようになりました。会いたいと思った人や病院を検索して、社内につながっている人いれば「コンタクトを取ってくれない?」とお願いすることもできますし。
また、病院に出入りをしている業者さんは、同一企業でも担当者が複数人いるケースがあるので、当社の誰がどの担当者とつながっているのか、また他にも担当者がいるのかなどが一目でわかり、業者さんとのコミュニケーションもとりやすくなりました。
それから、相手のことを知るためにEightを使うこともあります。たとえば、初対面の人に会うとき、その人の情報をFacebookなどのSNSで事前にチェックすることがありますよね。Eightもそれと同じように使っています。動物病院業界はとても狭いので、Eightの名刺情報やキャリアサマリを見れば、なんとなくですが、その人のこれまでの仕事が理解できるので。
採用面接の時なども、面接に来てくれる人を会う前に検索します。履歴書に書かれているキャリアだけでなく、人となりを表すような情報がわかれば、話がしやすいですし、初対面でもより深く相手を知ることができますよね。
それから、これは私個人の意見ですが、そもそも紙の名刺は溜まると邪魔なんです(笑)。クラウドで管理する方が楽。データ化すれば紙で保管する必要はないし、とても便利だと思っています。
狭い業界だからこそ、人との「つながり」が重要
グループ化拡大のために全国の動物病院にアプローチする中でよく感じるのは、もともとつながりのある院長先生や病院の方が、全く初めて会う病院よりもビジネスにつながりやすいということです。もちろん、M&Aのアドバイザーさんや銀行さんが紹介してくれた病院に会いに行くこともありますが、最終的にはつながりのある病院の方が、話がスムーズに進むことが多いです。狭い業界だからこそ、信頼できるつながりを辿る方が、効率的なのだと思います。
最初に申した通り、動物病院は個々に経営をしているため、考え方もそれぞれです。たとえばグループ参画の相談や交渉をする際も、事前にその病院の考え方や、持っているネットワークを知っておいた方がお互いにとって効率的なんです。ですから、ここでも名刺共有が役に立ちます。社内に、その病院とつながっている人がいれば事前に情報を得られるので。Eightは、その病院や企業が一緒にビジネスを進めていくうえで、本当に相性が良いかどうかを見極める、ひとつのツールにもなっていますね。
私たちは、グループ化を通して、この業界を良い方向に変えていきたいと思っています。動物病院業界は、獣医科を卒業して個人経営の動物病院で5〜10年働くと、それ以上の昇給が見込めません。自分より上の人は院長先生しかいないため、それ以上の昇給が期待できないのです。
大学入学当初は動物病院の先生を夢見る学生も多いのですが、学生生活の6年間でこうした現状を知ると、就職先として動物病院を選ばなくなる。そして、たとえ獣医師になったとしても、厳しい労働環境の中でモチベーションを保つことは難しく、よほどでない限り長くは続けられません。だから、業界の労働環境を変えることで、動物病院の先生を目指す学生がもっと増やしていきたいと思っています。
今、獣医師の6割は女性と言われています。しかし動物病院は19時まで診察をする病院が多く、出産後に復帰しづらい。病院は12時〜15時くらいまでお昼休みを取るので、その時間は診療をしませんよね。ということは時短勤務という働き方も難しいんです。こうした労働環境も、私たちの事業を通して改善し、女性の獣医師が安心して働くことができる業界へと変えていきたいと思っています。